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熟年の仕事とは

知研会員 久保田 貢

私は、40数年勤め終え60歳で定年後、幸いにも殆ど継続して何らかの仕事に従事している。妻が「貴方は仕事から離れると確実にボケがくる」と言うし、自分も納得しているからである。

愛知県で会社の社長をしている私の友人が昨年の春に、「ISO14001の認証を受けたいので手伝って欲しい」と依頼してきた。これまで幾つかの会社に在籍して来たが、一度もISOに係わったことがなかった。その会社を辞めて後を振り返ると「ISO、ISO」とは言っているが。

熟年の仕事とは

この社長の「もっと会社を良くして、従業員の安定した生活をさせたい。その為には現状を変える必要があり、その第一歩としてISOの認証をうけたい」との想いに、私は心から賛同し、つい乗ってしまった。

最初は、認証までの3ヶ年計画を作成したが、会社の現状が分かるにつれて、そんな悠長にしてはおられない、17年の3月末に!」となったから、さあ大変、実質10ヶ月で1年も無いがやるしかない。半分開き直りの状況で、直ちにコンサルタントや審査会社を選びスタートしたのが5月に入ってからである。

コンサルタントの指導を、事務局の誰よりも熱心に聞き、自分も本も何冊か読み、これまでの経験を織り込んで、ISO14001のシステム構築に取り組んだ。

会社自体は、実力もあり、現場技術者としては秀でた人は多いが、文書の作成などは経験していない。しかし、構築したISOを実行するのは、私ではなく、この人達である。色々気掛かりなことはあるが、とにかく事務局の先頭に立って夢中で取り組んだ。

やれば出来るもので、予定の17年3月末に認証取得を果たしたのである。

こう書くと順風満帆に思われるが、何事もアクシデントはあるもので、ほぼ先が見えて、追い上げの時期に、私が体調を崩して少し入院する羽目になった。あせった。幸いにも現在はその人の病状にもよるが、病室でパソコンもインターネット接続も出来る。看護士や主治医から「いい加減にしてくださいよ」と言われながら、「ハイ、ハイ」と返事良くしのいでいった。

入院したその日の「山陽新聞」のコラムに、養老孟子さんの、まるで私のことを見ていたかのような記事を見て、ギョッとした。「熟年者が仕事をすることは大変よいことであるが、全責任を背負ってはいけない。そのような立場でこれまで十分やってきたのだから。後は後輩に任せなさい。そして現役の者をサポートする黒子に徹しなさい。だってそうでしょう、あなたが倒れたら、その仕事も、悪くすれば会社まで転んでしまう。」

あなたが倒れたら・・・

これには参った、焦っている自分と重ねて全くその通りで、反省することしきり。だが、何故か「そんなこと言っても、止めるわけにはいかない!」と叫んでいる自分がいることも確かであった。

サムエル・ウルマンの「青春」の詩を知って早や40年以上になる。最近、この詩を新井満さんがすばらしい写真を付けて自由訳とし出版されていると友人に紹介され、早速手にしてみた。

これまでの訳とは部分的には大分違っているが、今の若者の共感は呼びそうである。

私たちの熟年が、この中の一節「青春とは 眞の青春とは 若き肉体のなかに あるのではなく 若き 精神のなかにこそ ある」をくちにすれば、負け惜しみに聞こえるかもしれない。だが、そのように在りたいと思い続けているのは、私だけであろうか。

2005.5月 記

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